1頭でも多くの野良猫が
人と共に幸せに暮らせるように
野良猫の避妊去勢手術は
獣医師だからこそできる愛護活動
飼い主のいない猫に関するいろんな考え方
飼い主のいない猫の対策
地域には、猫が好きな人や嫌いな人、興味がない人など、いろんな価値観をもつ人たちが暮らしています。
また猫に対する価値観が異なることでの衝突や、地域における関係性が複雑になる場合もあります。
「飼い主のいない猫が増えてほしくない」
「猫の殺処分をこれ以上増やしてほしくない」
「餌を好き勝手に与えないでほしい」
「猫が虐待されたり不当に扱われるのはよくない」
「猫による糞尿の始末に困っている」
「猫が車にひかれるのをよく見かけるけれど解決策がわからない」
……
など思いはさまざまですが、
「地域に飼い主のいない猫が増え続けるのはいいことではなく、これ以上増えないようにしたい」というのが多くの人たちの共通した願いの方向性といえます。
そのために私たちができることは、飼い主のいない猫が増えないようにすることなのです。
飼い主のいない猫を減らすために
飼い主のいない猫(野良猫、外猫など)を減らすために、私たちができることの一つとして、TNR(ティーエヌアール)という取り組みがあります。
TNRを実施された猫たちは妊娠繁殖できないようになるため、猫の数の抑制につながります。また、不妊手術を施されることで尿によるマーキングの頻度や発情期の大きな鳴き声をだす頻度、猫同士の喧嘩等の頻度も減少します。
TNR(ティーエヌアール)とは
TNR(ティーエヌアール)とは、
- Trap(つかまえて)
- Neuter(不妊手術をして)
- Return(元の場所に戻す)
これらの頭文字をとったものです。
- Trap:つかまえる
-
人と猫、お互いの安全のために捕まえるときは捕獲器を使いましょう。
決まった場所・時間に餌やりを行い、餌付けした後に、捕獲器を設置して保護します。
保護した猫が不安にならないように、捕獲器を布や毛布で包んであげてください。
捕獲器が足りない場合は、当院にご相談ください。
- Neuter:不妊手術をする
-
これ以上不幸な猫が増えないように、不妊手術を行います。
このときに、手術済みの目印として耳先をVカットします。
一度手術をしたことが見た目でわかるため、何度も手術されることを避けられます。手術の際の全身麻酔時に耳カットするので、猫にとって痛みのない一番負担が少ない方法です。
さくらの花びらの形にカットした猫のことを「さくらねこ」と呼んでいます。
- Return:元の場所に戻す
-
猫には縄張りがあります。猫を元の縄張りに戻すことで、他の新しい猫がやってくることを防げ、猫の数のコントロールが行いやすくなります。
また、野良猫として暮らしてきた子たちを無理やり保護することはストレスとなり、病気の原因にもなりかねません。成猫として生きていく力がある子は元の場所に戻し、適切な餌やりを行い、地域で見守ることが猫の数の増減把握につながり、繁殖制限を長期的に持続させることにつながっていきます。
なぜTNR活動を積極的にするのか?
猫は生後5ヶ月後から成熟し、年に2~3回繁殖を繰り返します。一度に3~6頭子猫が生まれ、またその子たちが繁殖を繰り返します。1年に1頭のメスから20~30頭近くまで増えると言われています。
昔に比べ、餌やりさんが世話をし、ごはんを与え、ときに病院に連れて行き治療することで、自然淘汰で亡くなる子たちが減少しています。
また殺処分ゼロ活動が活発になり、野良猫を引き取り処分することも減ってきました。
つまりそれは、生まれた命が助かる確率が高くなっているということ。
今生きている猫たちが与えられた一生を全うするには、今いる場所で人間達との共存をしていかなければいけません。
人と野良猫が共存していくために、飼い主のいない猫(野良猫、外猫)の数が増え続けないようにするためには、避妊・去勢手術をしてあげるしかありません。
さらに、その地域に「猫が迷惑!」と感じられないように、トイレの管理や餌やりのルール決め、地域間のコミュニケーションを上手に取るなどとの取り組みにより、猫トラブルを減らしていきます。最低限でもいいので、できることをしてあげることが、猫たちが暮らせる環境を整えることにつながるのです。
なぜTNR活動を積極的にするのか?
鹿児島市が、野良猫に避妊去勢手術をして地域住民が世話をする「地域猫制度」を導入して10年になります。
活動グループも増え、これまでに1,719匹の野良猫が手術を受けました。処分数は2019年時点で(自然死含む)1.059件から536件と、この10年で半減しています。
人と猫が共生する社会を目指すためには、継続した長期的な取り組みが必要なのです。
鹿児島市では、地域猫活動を推進し、不幸な猫を増やさず、地域住民への被害を軽減させています。
ル・オーナペットクリニックは
どうぶつ基金協力病院でもあります。
当院でのTNRによる避妊去勢手術の流れ
ル・オーナペットクリニックからのお願い
私たちは野良猫の避妊去勢手術だけを行っているのではなく、一般診療をしながら『一頭でも多く野良猫を救いたい、と活動している人の負担を減らしてあげたい』という思いで、日々TNR活動をしています。
相談をいただいてから、スムーズに避妊去勢手術が進められるよう、ご協力をお願いします。
野良猫の避妊去勢手術相談から手術までの流れ
野良猫は普段自由に暮らしています。捕獲したら、おうちで何日も待機させることなく速やかに来院し手術させてあげてください。
計画的に3頭以上捕獲予定の場合は、あらかじめ捕獲予定日および最大頭数をご連絡ください。
捕獲器が足りない場合は、当院にもございますのでご相談ください。
月をまたいでTNRをする際は、月末に『次月の臨時休診日』をお問い合わせください。
-
まずはお電話ください
初めてご利用される方は、捕獲する前に一度ご連絡ください。
必要な注意事項をお伝えします。
臨時休診や手術予約で埋まっている日がある場合があります。 -
予約不要、来院前にお電話を
予定しても野良猫は捕まらないことがほとんど。そのため予約はいりません。
ただし捕獲成功したら、まずご連絡を。
生後2ヶ月(体重400g以上)であれば、手術可能です。 -
できれば午前中に捕獲・来院を
診療時間内に手術対応できるときはしますが、基本的に昼休み中(12:00~16:30)に手術を行っているため、午前中に来院していただけると助かります。夕方以降捕獲できた場合はご相談ください。
来院から手術、お迎えまでの流れ
遠方からいらっしゃる方、複数頭連れていらっしゃる方に関しては、なるべく負担がかからないように対応しています。
待ち時間を最小限に抑えたい方は、昼休み(手術時間)開始時刻の12時頃に来院してください。
発情がきて子宮が腫れていたり、妊娠している場合を除き、メスは開腹し、子宮と卵巣をとる『全摘術』を採用しています。
傷口は1cm程度で皮内縫合にて開かないようにしています。
-
基本的に日帰り
午前中に捕獲・来院していただき、夕方お迎えをお願いします。
ただし遠方の方に関しては、待ち時間が少なく済むように対応しています。極力希望時間に添うよう対応しています。 -
手術時間はオスメスで異なる
麻酔がかかるまでに15分程度かかります。平均手術時間はオスは1~2分ほど、メスは5~10分程度です。
往復時間がかかる場合は待機しててもOK。一旦帰ることも待つことも可能です。 -
手術終了の目処が立ったら連絡
手術終了の目処が立ったらご連絡しますので、お迎えにきてください。
心配だから夕方まで預かっていてほしいと言われる場合はお預かりもできます。
お迎え後のお願い
麻酔をかけた当日は、目がしっかり醒めておらずフラフラしています。半日~1日は様子を見てから、元の場所に戻してあげてください。
-
麻酔の影響で吐くことあり
麻酔の影響で吐くことがあります。少量のごはんで捕獲してもらうのは、このためです。
吐いているときは、気管につまって窒息死したり、引っかけないように様子を見てください。 -
しっかり醒めてから離して
当日は麻酔が残ってフラフラしています。フラフラしている状態で離すと、車を避けて走れず事故に遭うことも。
しっかり起きてから離してください。 -
しっかり起きてから飲食を
フラフラの状態でお水やごはんをあげないようにしてください。
あまり早いタイミングであげると吐いてしまうことがあります。万全の態勢になってから飲食をさせましょう。